【雪夜の人影】

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今だから言える話だ。
昔、福井の駅で結構夜遅くに電車を待っていた時のことだ。なんでも特急とかも通る駅で乗り場が多かったもので、私は目当ての電車がどのホームに来るのか正直よく分かっていなかった。だが、降り立ったホームに他にも座っている人がいるのを見た私は「ああ、たぶんこの人もおんなじ電車に乗るんだな」と思い安堵した。夜の空は軽く吹雪いており、外で長々と待つには寒い天気だった。この人は私より少し前に待合室から出てきて、このベンチで待っているのだろう。
二人しかいないホームで(それに、電車はもう一分足らずで来るはずだった)わざわざ近くに行くのも変な気がして、少し離れた位置で電車が来るのを待っていた。
けれどもおかしなことに、時刻になったのに電車はまだ来ない。放送などもない。遅れているのかな。まあこの雪ならあり得るか。ここに来るまでのフェリーも遅れていたし。
そんなことを考えながら、待つ。やはり冬の日本海沿いは寒い。じっと電車が来るのを待つ。舞う雪のなかで、じりじりと時間が過ぎていく。
ふと見やると、向かいのホームから電車が発車するところだった。………あれ、この時間…他に電車なんてあっただろうか。
なんだか不安になってきたーーいや、もっと言えば、明確に嫌な予感がしてきた私は、ベンチに近づき、もう一人の待ち人に聞いてみることにした。ともすれば、二人揃ってホームを勘違いしていたということもあり得る。
「すいません、」
長浜行きの各停ってこのホームで合ってますかね?
そう聞こうとした私は、言葉を失った。

椅子に座っていると思っていた人は、恐竜の人形だったのだ。
なんてことだ! 愕然とする私の背後で、電車は既にホームを離れ、宵闇の中へと消えてくところだった……

実話

Posted by もっくる