フェリー乗り放題券で行く奄美群島と沖縄 0日目

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大学の大きな試験がそろそろ来る…という頃、友人から「これで旅行に出ないか」と誘いの連絡を受け取った。見ると、「結いパスポート」のリンクが張られている。

「結いパスポート」「結いきっぷ」は、鹿児島から奄美の島々を経由し沖縄に至る長距離フェリーが、2週間も乗り放題になる恐ろしい周遊券(発行会社によって名称が異なるだけで、内容はまったく同一)。年明けからは長期休みとは完全に無縁な生活、大きな旅行をする機会は今しかなかろう…と、二つ返事で快諾。試験後の休暇を利用して島巡りを敢行することにした。

もくじ

旅立ち

0日目 2025/10/17(金)

年度最後の試験が終わったその足で、鹿児島新港へ向かう。フェリーの入出港に合わせて、市の中心部と港とを結ぶバスが出るので、至極便利だ。見慣れたヤシの木マークのバスを降り、窓口で「結いきっぷ」を受け取った。

程なくして、乗船案内が始まる。鹿児島-沖縄航路は「マルエーフェリー」と「マリックスライン」の2社が運航しており、おおよそ隔日で両社の船が出航する。どうやら、この日はマルエーの「あけぼの」に乗るようだ。

港のボーディングブリッジから船へ乗り込むなり、かさばる荷物を二等船室の指定エリアに置き、デッキからの景色を見に行く。岸壁では、フォークリフトや、島へ向かうトレーラートラックが忙しなく動き回っている。少し遠くの桟橋では、種子島行きの貨物フェリーが汽笛を鳴らし、一足先に港を出ていく。さらに岸壁の反対側、桜島がある方向を見遣れば、トカラ列島からの旅客船が港へ帰ってくる。まだまだ鹿児島は暑い時季だが、それでも夕方の潮風は、この喧騒の中で些か心地よく感じられた。

1時間弱しか営業しない船内レストランでカレーを頬張っていると、知らぬ間に船が岸壁から離れ始めている。最初の目的地・名瀬まで、おおよそ11時間の航海が始まった。

二等の大部屋に戻ってきたのはいいが、既に手持ち無沙汰だ。この船にはめぼしい娯楽エリアが無い。陸から離れるにつれてモバイル通信の感度も悪くなってゆくので、SNSも満足にできない。友人らは…というと、他の用件があって翌日の便で下ることになっており、つまり今は一人旅同然の状態。こうなればもう、読書に限る。

1時間も活字を読んでいると、眠気が迫ってくる。明日の入港時刻は早いし、消灯の時間にあわせてサッサと寝てしまおう。見知らぬ旅人たちに囲まれる大部屋の空間は、少しばかり居心地が悪いが、それでも案外寝られるものなのだ(貴重品の管理だけは怠らぬように…)。

Posted by げーほく